内容証明郵便の書き方
内容証明郵便の書き方
どんな用紙を使えばよいのか
内容証明郵便を知っているという人でも、これは赤枠、赤いマス目の用紙に書かなければいけないと思い込んでいる人がいます。実は、どんな用紙に書いてもよいのです。便せんに書いてもよいし、原稿用紙でもよいし、白い紙、メモ用紙でもかまいません。大きさだって自由です。
手紙を出すとき、普通は便せんに書きますが、原稿用紙でもかまいません。なかにはノートを破いて書く人や、銀行でもらったメモ用紙を使う人もいます。内容証明郵便もこれと同じです。用紙についての制約はありません。
ただ内容証明郵便は、普通の手紙と違って、同文の手紙を三通書かなければなりません。また1枚の紙に書ける文字の数が決まっております。一行二○字以内、一枚に二六行以内です。
手書きで内容証明郵便の文書を作る場合、便せんや白紙を使うと、いちいち字数を数えながら書かなければいけません。原稿用紙のようにマス目のある用紙(一行二○字、一枚に二六行)の方が数えるのに便利です。
この用紙は、日本法令様式販売所や文房具店で取り扱っています。誰でも簡単に買えますし便利ですから、手書きで内容証明の文書を作成するときには、この用紙を使うことをお勧めします。この用紙が手に入らないときには、原稿用紙やけい紙に字数、行数を注意して書けばよいのです。
パソコンがあり、インターネットに接続できるなら、電子内容証明郵便を利用することもできます。
同文のものを三通作る
内容証明郵便は、前にも言いましたように、全く同文の手紙を三通書かなければなりません。一通は相手方(受取人)に送り、一通は差出人が持ち、残りの一通は郵便局が保管します。
三通とも同文であればよいのですから、別々に手書きをする必要はありません。一通書いて、あと二通はそのコピーでもよいのです。パソコンならば、三通を一度にプリントアウトすることもでき、便利です。
また市販の内容証明郵便の用紙に、カーボン紙を二枚はさんで一度に三通書いてもよいですし、ノーカーボンの内容証明郵便用紙も市販されているので、これを利用するのも便利です。
一行二○字以内・一枚二六行以内で書く
内容証明郵便を書く場合には、一行二○字以内、一枚に二六行以内と法律(郵便規則)で決まっています。便せんやけい紙を使う場合には、字数を数えながら書かなければいけません。しかし、市販されている内証証明郵便の用紙は、ちゃんと一行二○字、一枚二六行のマス目が印刷されています。
制限以内なら、たとえ一行が一八字でも一○字でも、また一枚に二○行でも一○行でもかまいません。
一般に使われている四○○字詰めの原稿用紙は、一行二○字、一枚二○行ですから、それを使っても、内容証明郵便として、もちろん有効です。また、パソコンやワープロでしたら、制限内に簡単に作成できます。
横書きの内容証明郵便の場合には、一行二○字以内、一枚二六行以内のほかに、一行一三字以内・一枚四○行以内か、または一行二六字以内・一枚二○行以内でもかまいません。市販の用紙の場合、そのまま横書きにすればよいのです。また、その用紙を横にして、一行二○字、一枚二六行で横書きにすることもできます。
なお、句読点やかっこは、一字として計算されますので注意してください。原稿用紙に書く要領で、句読点やマス目一コマに入れて書けばよいのです。
使用できる文字、数字、記号は
内容証明郵便に使用できる文字は、きまっています。かな(ひらがな、カタカナ)、漢字、および数字です。
数字は、123・・・の算用数字も、一二三や壱弐参の漢数字も使うことができます。
英字は、氏名、会社名、地名、商品名等の固有名詞にだけ使えます。ですからコカ・コーラとしないで、Coca-Colaとすることができます。
なお、英文、中国文、韓国文の内容証明郵便は許されていません。
かっこ、句読点、その他一般に記号として使用されるものは、内容証明郵便に使えます。
記号としては、m,㎡,g,kg,l,kl,%、+、-、No.、Tel.、sin、H2O等があります。
句読点も記号も、一個一字として計算します。
かっこは、上下(横書きの場合は左右)を合わせて一字とし、字数計算では上(横書きの場合は左)のかっこのある行の字数に含めます。たとえば、「 」、『 』、( )は各々一字です。
なお、かっこつきの数字でも、一二三とか(一)(二)(三)のように、文中の序列を示す記号と認められるときは、一や(一)を一字とします。
記号ではありませんが、文字に傍線がふってあっても線が引いてあっても一字に計算します。
二枚以上のときの注意
内容証明郵便は、どんなに長文になってもかまいません。五枚でも、一○枚でも、二○枚でも、枚数に制限はありません。
ただし、二枚以上になったときは、ホッチキスやのりで綴じ、そのつなぎ目に差出人のハンを押します。これを契印または割印といいます。忘れずに契印をして郵便局へ提出してください。
書き間違えたときの訂正方法
普通、手紙を書いていて、書き間違えると、二本の線を引いて消したり、塗りつぶしたりします。内容証明郵便の場合は、訂正の仕方が郵便規則で決まっていて、普通の手紙のようなわけにはいきません。
文字を書き間違えた場合には、間違えた個所を二本の線で消します。それから正しい文字を書き加えます。文字を削除するときに、何を消したのか読めるようにしておかなければなりません。ですから、塗りつぶさずに、二本の線で消しておきます。
訂正したら、その欄外に「何字削除、何字加入」と書き、そこに差出人のハンを押します。どこの個所を訂正したのか、わかるようにすることが大切ですから、「何行目何字削除、何字加入」と書けば、もっとよいでしょう。
欄外でなく、末尾余白に書いてもかまいません。その場合は必ず「何行目何字削除、何字加入」と書きます。単に「何字削除、何字加入」では、どこを訂正したのかわからなくなるからです。
訂正に使うハンは、差出人のハンであれば実印でなくても、三文判で有効です。
差出人欄と受取人欄の書き方
手紙の最後には、自分の名前と相手の名前を書くのが常識です。内容証明郵便の場合、もう少していねいというか、厳格で、手紙の終わりに、差出人の住所氏名と受取人の住所氏名を書きます。名前だけではいけません。住所を書くことも義務付けられています。
差出人の住所氏名、受取人の住所氏名を書く場所は、原則として最後ですが、最初に書いてもかまいません。横書きの内容証明郵便では、冒頭に書くことが多いようです。
次にハンの問題です。内容証明郵便をみると必ず、縦書きの場合は差出人の名前の下に、横書きの場合は差出人の名前の右に、捺印してあります。
しかし法律上は、差出人の名前の下の捺印は、必要ありません。捺印がなくても有効です。
ではなぜ差出人の名前の下に捺印しているかというと、内容証明郵便はいずれも重要な通知(意思の表示)ですから、間違いなく本人の意思で作成されたのだということを示すためです。
日本では、重要な文書にはみな署名捺印しています。
契約書を見てください。領収証を見てください。必ずそうなっています。別に法律で契約書や領収証には署名捺印しなければ無効だと決められているわけではありません。ハンを押していないものは、本当にその人が書いたかどうかわかりません。信用度が低くなります。
捺印するのはその意味ですから、ハンは差出人のものであればよく、なにも実印である必要はありません。なお、訂正したときの訂正印や、文面が二枚以上にわたるときの契印(割印)は、郵便規則で押しなさいと決められています。これは必ず押してください。
差出人名と受取人名の書き方で、もう一つ誤解があります。
内容証明郵便というと、「通知人山田太郎」「被通知人佐藤一郎」、あるいは「催告人田中二郎」「被催告人髙橋花子」というように、差出人名や受取人名に肩書きをつけなければいけないと思い込んでいる人がいます。
たしかに、内容証明の本に出ているひながたを見ると、ときどきそういう肩書きがついています。
しかし「通知人」「被通知人」などの肩書きは不要です。受取人名は○○殿とか、○○様と書きますから、そんな肩書きをつけなくても、誰が「通知人」で、誰が「被通知人」かわかります。もちろん、つけても間違いではありません。書く人の好みの問題です。
ただし、差出人の住所氏名と、受取人の住所氏名を並べて書いた場合には、どちらが差出人かわかりませんから、通知人何某、被通知人何某と書きます。
タイトルは必要か
内容証明郵便には、よくタイトルがついています。たとえば「貸金請求書」「売掛金請求書」「家賃値上通知書」「家賃支払催告書」「賃貸借契約解除通知書」あるいは簡単に「通知書」「通告書」「請求書」「催告書」などです。
タイトルをつけないで、普通の手紙のように、「拝啓 秋冷の候益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。さて、私は貴殿に平成○○年○○月○○日金三○○万円をお貸ししましたが・・・」と書き始めても、いっこうにかまいません。
あるいは、もっとストレートに「前略 弊社は貴社に対して平成○○年○○月○○日金五○○万円を貸与いたしましたが・・・」でもよいのです。タイトルをつける、つけないは、差出人の好みの問題です。
タイトルは、内容に合ってさえいれば、どんなものでもかまいません。
タイトルを何にしたらよいかわからないときは、「通知書」あるいは「通告書」が無難です。どんな内容証明郵便にも使えます。お金の請求なら「請求書」でもかまいません。内容証明郵便に対する返事のときには「回答書」がよいでしょう。
時候のあいさつは必要か
普通の手紙でしたら「拝啓 猛暑の折いかがお過ごしでしょうか。さて・・・」とか「拝啓 厳寒の候貴殿にはいよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。さて・・・」と、まず冒頭のあいさつをして、それから用件に入ります。
ところが内容証明郵便の場合には、冒頭のあいさつを省き、「通知書」などとタイトルを書いたら、すぐ「私は貴殿に対して、平成○○年○○月○○日金五○万円をお貸ししましたが、返済期を過ぎましたのに、現在までお返しいただいておりません・・・」と書くのが普通です。
これでよいと思います。
もっとも時候のあいさつを書いてはいけないということではありません。内容証明郵便はかた苦しく、また挑戦的ですので、あたりをやわらかくするために、意識的にあいさつを入れることもあります。
封筒の書き方
封筒は、普通の手紙の場合と同じです。現金書留の時のように、内容証明郵便専用の封筒があるわけではありません。市販されている封筒を使います。
封筒の表側に受取人の住所氏名、裏側に差出人の住所氏名を書きますが、その住所氏名は内容証明郵便に書いてあるものと、同じに書きます。中に入れる手紙文の住所氏名と封筒の住所氏名が違ってはいけません。そして、三人の連名で出すときは、封筒の裏側に三人の住所氏名を書きます。なお手紙文には通知人何某、被通知人何某と書いたとしても、封筒には「通知人」「被通知人」というような肩書きを書く必要はありません。
封筒は封をせず、同文の手紙文三通と共に郵便局へ持って行きます。封をするのは、郵便局で内容証明郵便の手続きをしてからです。
資料や写真は同封できない
普通の郵便でしたら、写真や資料を同封することができます。書留郵便の場合にも可能です。
しかし内容証明郵便の場合には、手紙文以外の物、資料や写真を同封することはできません。
「私は川崎太郎氏に、平成○○年五月一○日金三五○万円を貸し付け、その際貴殿が保証されました。川崎氏は全然返済してくれません。保証人として貴殿に支払ってもらいたいと思います。貴殿は保証した覚えがないと言っておられますが、借用証に貴殿の署名と捺印があります。借用証のコピーを同封しましたので、お確かめください。そして至急お支払いください」
という内容証明郵便を出したい場合があります。
しかし借用証のコピーを同封することができませんので、こういうときは、「借用証のコピーを同封・・・」を「疑問があれば、いつでも借用証のコピーを差し上げる用意があります」として出しておくとよいでしょう。
外国人が内容証明郵便を出すとき
内容証明郵便に使えるのは日本語だけです。英字は固有名詞を書くときに使えるだけです。
英語やフランス語等の外国語による内容証明郵便は認められていません。外国人も日本語で書かなければいけません。
外国人の場合、困るのは印鑑がないことです。差出人名の下にハンを押さなくとも有効だということは前に説明したとおりです。しかし、字句を訂正する場合の訂正印や手紙文が二枚以上にわたる場合のつなぎ目にする契印(割印)は、郵便規則で義務付けられております。
といって、外国人に印鑑を要求できませんので、その場合には、ハンを押すかわりに、サインをすればよいことになっています。
差出人が二人以上のとき
父親の持っていたアパートを三人の息子が相続したところ、アパートの住人が何か月も家賃を支払いません。そこで内容証明郵便で、家賃の請求と賃貸借契約の解除をすることになりました。
この場合、三人の息子が各々、同一の内容証明郵便を作って差し出すこともできますが、三人が連名で出せば一回ですみ、簡単です。
三人の連名で差し出す場合には、手紙の本文末尾の差出人欄に、上記のように書きます。
(表)
差出人が二人以上の場合、訂正印や契印は差出人全員が押すことが必要です。
差出人が複数の場合には、受取人が複数の場合と違って、用意する内容証明郵便は差出人が一人の場合のように同文のもの三通です。差出人用は一通だけです。したがって、郵便料金も差出人一人の場合と同じです。
封筒の裏側に、差出人三人の住所氏名を連記しなければならないことは前にも述べたとおりです。
受取人が二人以上のとき
前の例とは逆に、ある人が土地を貸していたところ、借地人が死亡し、借地権を息子三人で相続したのに、地代を支払わない。そこで内容証明郵便で、地代の請求と借地契約の解除をするということがあります。
この場合、地主は三人の相続人に対し、同じ内容証明郵便を別々に差し出すこともできます。しかし、この方法ですと、三回も内容証明郵便を出すことになります。
受取人が違うだけで、同じ内容のものなら、一回の内容証明郵便で出すことができます。これを同文内容証明郵便といいます。これは、さらに次の二つに分かれます。
①完全同文内容証明郵便
二人以上の受取人にあてた内容証明郵便で、手紙の内容が全く同じであるだけでなく、日付、差出人の記載、受取人の記載が全く同じもの完全同文内容証明郵便といいます。二人以上の受取人に出すのですから、受取人の記載が同じということは、受取人全員の住所氏名が連記してあることになります。
地主から三人の相続人に対し完全同文内容証明郵便で出す場合、受取人の記載は、前ページの書式のようになります。ほかは普通の内容証明郵便と同じです。
どの受取人のところにも受取人全員の住所氏名が連記してある、全く同じものが届くのです。
受取人一名の普通の内容証明郵便の場合には、受取人用、差出人用、郵便局用の合計三通を作りますが、完全同文内容証明郵便の場合には、受取人が増えた分だけ増やします。受取人が三名なら、受取人用三通、差出人用一通、郵便局用一通の、合計五通です。受取人が四名なら全部で六通作ります。受取人の数プラス二通です。
封筒は受取人の数だけ用意します。しかし、封筒の表面には受取人全員の住所氏名を連記するわけではありません。受取人一人ずつの住所氏名を書いて郵便局に持って行きます。
②不完全同文内容証明郵便
二人以上の受取人に同じ内容証明郵便を出す場合に、手紙の内容、日付、差出人の住所氏名は同じですが、完全同文内容証明郵便と違って、受取人全員を連記せず、受取人の記載は一人ずつ別々に書いて出すこともできます。受取人の住所氏名だけが異なるので、不完全同文内容証明郵便といいます。
地主から三人の相続人に対し、不完全同文内容証明郵便で出す場合、受取人の記載は、四九~五○ページの書式のようになります。ほかは、やはり普通の内容証明郵便となります。
不完全同文内容証明郵便で出す場合にも、受取人の数プラス二通作ります。受取人二名なら四通、受取人三名なら五通です。
手紙の内容、日付、差出人の住所氏名までは同じですから、そこまでは共通です。そこから先(受取人の記載)が完全同文のとは違います。
郵便局と差出人が保管する手紙文、つまり二通は、受取人全員の住所氏名を連記します。受取人に送るものは、受取人一人ずつの住所氏名を書きます。鈴木一郎に送るものには、鈴木一郎だけの住所氏名を書き、鈴木二郎に送るものには、鈴木二郎だけの住所氏名を書きます。つまり受取人全員の住所氏名を連記した手紙文が二通、鈴木一郎の住所氏名を書いた手紙文①が一通、鈴木二郎の住所氏名を書いた手紙文②が一通、鈴木三郎の住所氏名を書いた手紙文③が一通です。
(表)
③同文内容証明郵便の利点
私は、複数の相続人に対して内容証明郵便を出す場合や、貸金の請求を借主と連帯保証人の同時にする場合、同文内容証明郵便を利用しています。
受取人が何人いようと、一回の内容証明郵便ですみ便利です。その上、別々に出すよりも内容証明郵便の料金が安くなる利点があります。
代理人によって出すときの注意
内容証明郵便は、必ず本人が出さなければいけないわけではなく、代理人をたて、その人に出してもらうこともできます。
たとえば、お金を貸していたけれど、自分は病気なので、息子を代理人にして貸金回収の交渉をさせようとする場合には、息子さんが代理人として貸金請求の内容証明郵便を出したらよいのです。
内容証明郵便だけをほかの人(たとえば行政書士等)に書いてもらい、あとの交渉はご本人がするという場合には、代理人名ではなく、直接本人名で出します。
代理人によって出すときは、誰の代理人として、誰が出すのか、はっきりわかることが大切です。
冒頭に代理文句(私は、東京都・・・原田花子の代理人として、ご通知申し上げます)を書いた場合には、差出人名を書くとき、「原田花子代理人」という肩書きをはぶき、「東京都中央区銀座八丁目四番四号 伊藤太郎○印」と書いてもかまいません。
もし、冒頭に代理文句を書かず、いきなり「原田花子は貴殿に対し・・・」とする場合には、日付のあとの差出人欄に、上記のように書きます。